1曲目はザ・ポリス再結成の来日公演の時と同じく「孤独のメッセージ(「MESSAGE IN A BOTTLE」:ザ・ポリス1979年2ndアルバム『白いレガッタ』:『REGGATTA
DE BLANC』収録)で幕を開けました。
パンパンパンパン!という力強いスネア・ドラムのアタックに続いて、あのギター・アルペイジオのイントロだと分かると歓声と共に会場一体となる手拍子が巻き起こり、次いでSTINGが「JUST A CASTAWAY~♪」と一声歌い出すと更なる大歓声と共に一瞬にして場内がヒートアップ!「ロック・クラッシック曲」が持つパワーの偉大さを痛感すると同時に全く衰えを知らないSTINGのヴォーカリストとしての不変振りをも痛感する驚喜のオープニングでした。
その熱気のまま曲は「ルーズ・マイ・フェイス・イン・ユー(IF I EVER LOSE MY FAITH IN YOU)」へ。1993年リリースのソロ4作目『TEN
SUMMONER’S TALES』のオープニング曲だったこの曲はSTINGの弾くベースラインが聴きどころ。イントロと間奏で聴かれるハーモニカの音色が美しいです。エンディング間際に「フクオカ。。。コンニチワ」と軽く挨拶を挟んで「IF
I EVER LOSE MY FAITH~♪」のリフレインで曲が終わると再び大きな歓声と拍手が会場を包みます。
その余韻がおさまるのを待たず「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」(1987年2ndソロ作『…NOTHING LIKE THE SUN』)のイントロが!真っ赤なバックライトにSTINGのシルエットが映え渡るそのカッコ良さときたら!早くも3曲目でこのキラー・チューンの登場はヤバイです(笑)。エンディングではこの曲のメインテーマである「BE
YOURSELF NO MATTER WHAT THAY SAY~♪」のフレーズをSTINGとオーディエンスが掛け合いで歌い、お客さんの気分もすっかりクールな「イングリッシュマン」に。
曲が終わりひと際大きな歓声が起こると間髪入れずに力強いエイトビートのドラムに乗せて「セット・ゼム・フリー(IF YOU SOMEBODY SET
THEM FREE)」へ。この曲は1985年1stソロ作『ブルー・タートルの夢(『THE DREAM OF THE BLUE TURTLES』)の1曲目でありソロ・アーティスト:STINGとしての1stシングルでもあった記念すべき1曲。この曲では男女によるバックコーラスの2人が大活躍。曲の後半からはオリジナルには無かったハーモニカ・アレンジによってまた新鮮な雰囲気が楽曲に吹き込まれていました。
そしてここでも曲終わりの余韻に浸る間もなくSTINGの「ワン、トゥ、スリー」というカウントでドラムがフィルインして次の曲「マジック(EVERY
LITTLE THING SHE DOES IS MAGIC)」へ。ザ・ポリス1981年の4thアルバム『GHOST IN THE MACHINE』からのヒット・シングル。ゆったりとしたテンポから徐々に盛り上がってきてサビでポップに弾ける構成は否が応でもオーディエンスの気分を高揚させます。曲の最後では恒例の「イヨオ~♪」というフレーズでの大合唱が起こりSTINGからも「ドモアリガトウ!」の言葉が。と、ここでメンバー紹介に。まずは長年のパートナーであるドミニク・ミラー(G/Vo)から。そしてもう一人のギタリストは、ナント!そのドミニクの息子であるルーファス・ミラー。いい息子さんを持った父親です!続いてジョシュ・フリーズ(Dr)、ジャマイカ出身とアナウンスされたケヴォン・ウェブスター(Key)、男性バックコーラスのジーン・ノーブル、女性バックコーラスのメリッサ・ムジーク、そして今回のバック・メンバーの要とも言えるハーモニカのシェーン・セイガーの順で7人のバック・メンバーが紹介されました。
「シェーンがスティーヴィー・ワンダーのパートを演奏するよ」と口添えられて曲は「ブラン・ニュー・デイ」へ。1999年リリースの6thアルバム『BRAND NEW DAY』のタイトル曲。シェーンのハーモニカがフューチャーされたこの曲のアレンジを耳にした時、今回のツアーのライヴ・アレンジにおいて彼が果たす役割が大きいものであることに気付かされます。この曲以外でもオリジナルではサックスやキーボードでプレイされているパートを彼のハーモニカが取って代わって演奏されるシーンがいくつもあるのです。公演を通して是非、彼の演奏にも注目して下さい!
感傷的なムードの中で次に重ねられてきた演目は「アラウンド・ユア・フィンガー」(「WARAPPED AROUND YOUR FINGER」/ザ・ポリス1983年のラスト・アルバム『SYNCHRONICITY』収録)。まるでボブ・マーリーのレパートリーかのようなスロウなレゲエ・ビートにリアレンジされたのに加え、オリジナルのハイトーンな歌唱も低いトーンで静かに歌われたことで聴き手をゆっくりと包み込む不思議な感覚に曲の印象が変貌を遂げていました。
続いてSTINGの「ワン、トゥー!」というカウントからドラムのジョシュ・フリーズの手数の多い激しいプレイが炸裂する「ウォーキング・オン・ザ・ムーン」(『REGGATTA
DE BLANC』収録)へ。曲間では「イェーオ~♪」というフレーズの大合唱が起こり、そのバックにジョシュの重厚でアクロバティックなドラムが絡むという、これまで聴いてきたこの曲のライヴ・アレンジでは今回のヴァージョンが一番カッコイイ!と思いました。途中「ゲット・アップ、スタンド・アップ/ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ(1973年)」の一節が盛り込まれていたこともVERY
GOOD!! 今日のライヴのハイライトのひとつでした。
続いてまたもアウトロに重なるようにエキゾチックなイントロに導かれて彼の90年代キャリアを締め括るに相応しかった大名曲「デザート・ローズ」へ(『BRAND
NEW DAY』収録)。白光のバックライトに照らされて両手を挙げるSTINGのシルエットが眩い!ここにきてヴォーカルはますます色気を帯び、ミステリアスな曲の雰囲気を相まってオーディエンスを完全にノッウアウト。ホント、参りました!一方で荘厳なシンセサイザーを中心とした重厚なサウンド・プロダクションによるハードなロック・アレンジは、このバンドが持つポテンシャルの高さを見事に物語っていました。
曲終わりからほどなくしてジョシュのスネア・ドラムがカットイン…そう、「見つめていたい」(「EVERY BREATH YOU TAKE」/『SYNCHRONICITY』収録)。エッ!もうこの曲やっちゃうの?ということはライヴも終わりが近いの??というさびしい予感をこらえながら、この「80’s
BEST SINGLE楽曲(1983年第26回グラミー賞最優秀楽曲)」をかみしめる様にオーディエンスの皆が聴き入ります。エンディングで再びメンバーの紹介を挟み、サビのフレーズのリフレイン。この時間が永遠に終わらなければいいのに。。。という切なる願いは叶わず、やっぱり終わりは来てしまいます。ここまでノンストップで一気に聴かせる進行で本当に“アッという間”に本編終了。「ほんの一瞬、夢を見ていたのか?」と思えるほど「秒速」で時が過ぎたような不思議感覚に。何だか身体も気持ちもフワフワしていました。
「サンキュー、フクオカ~ユーアー・ビューティフル・オーディエンス」と言葉を発してからベースからアコースティック・ギターに持ち替えて、いよいよラスト曲の定番である「フラジャイル」へ(『…NOTHING LIKE THE SUN』収録)。あぁ、本当にライヴが終わってしまう。。。という気持ちに襲われながらも本編ラストの「見つめていたい」の時と同様に全オーディエンスが彼の歌声・音楽とその姿を静かながらも熱く見聴きする様はとても感動的で美しい光景でした。「ドモアリガトウ~!See You Again,Good Night!」と言ってステージ袖に帰っていく「真っ赤なTシャツ姿」が変わらず眩しかったです!!
ヒット曲の数々に感動
今回は「My Songs」というセルフカバーアルバムの発売に合わせてツアーが行われたので、セットリストはグレイテスト・ヒッツソングコレクションさながら。皆さん思い入れのある曲は様々でしょうけど、余すことなく披露してくださった感じで本当にファン泣かせのコンサートだったかと思います。個人的にはポリス時代の「Every
Breath You Take (見つめていたい)」「Message in a Bottle」「Roxanne」、ソロの「Englishman
in New York」「If You Love Somebody Set Them Free」「If I Ever Lose My Faith
in You」 などなど超大好きです。今回生で聴けてとっても感動し、あらためてスティングの偉大さを痛感したのでした。